前略・・・
あなたは、家に帰れば家族がいるかもしれません。
働き盛りで食料が必要かもしれません。
子を養う為には必要なのかもしれません。
でも 何も言わず、私に何も言わせず死んでください。
多分あなたを殺す事は簡単です。
とくにこの時期そう思います。
あなたの音も嫌いな事も付け加えておきます。
他の人は 殺しません。
あなただけです。
もしあなたに身だけでなく心まで奪われたなら
憎くてたまらなくなり、絶対殺そうとしてしまいます。
多分夜中じゅう、カーテンの後ろまであなたを探すでしょう。
茶色のあなたは 北海道のハピモコさんが憎んでいましたが、
茶色のあなたより私は黒いあなたのほうが憎いです。
モノトーンのおしゃれないでたちでヒョウヒョウとしているあなたの姿を見ると
私は反射的とも思えるスピードで右へ左へ上へ下へと手が伸びてしまいます。
この夏もあなたの季節になりました。
私もシミの残る年齢になりました。
そういうことは 元から絶たないと、と思っています。
私を刺す前にあなたを殺そうとする私を許してください。
蚊 様
美波