続・ カレー物語

君はカレーを作らないって言ったね。

ええ。

返事の声こそ小さい声でかわいいのだけど

彼女は 少し目を見開いて返事をしたんだ。

小さい目を思いっきりね。

その目は少し血走っていて 僕は恐かったんだ

でもね・・・

彼女は申し訳なさそうに 雲を見上げてからゆっくりとこちらを振り返るんだ。

そのとき僕は 確かに見たんだ

彼女のおでこに 赤いテンがあるのを。

赤ちゃんがお宮参りにつけてもらう 『大』の字じゃないんだ。

千昌夫のほくろみたいなのが 赤かったんだ。

美味しいカレーを見つけたの。

だから 約束を破って 作っちゃったの。

それも ずっとよ。

それしか作ってないの。

ほんとよ。

中辛と辛口があるの。甘口はないのよ。

甘口はこの世に存在しないの。

宇宙に行っても無駄よ。

絶対に存在しないのよ。

最近は 辛口の方が好みだわ。

そしてね、合挽き肉が10月10日の天気予報が絶対晴れっていう確率ぐらいに合うと思っていたけど

エビちゃんと(蛇顔の)モエちゃんとどっちが好み?って聞いたら エビちゃんっていう確率くらい

鶏肉の方が美味しいの。

おかげでカレーと一緒にタンドリーチキンが作れないわ。

そこまで一気に言うと彼女は急に泣き出したんだ。

僕はどうしていいか分からなかったよ。

だってそれは しくしくというよりも めらめらってかんじの泣き方だったから

こっちとしても どう声をかけるかとまどっちゃったんだ。

そう、悔し泣き。

カレーを作って悔し泣きするおばさんを見たのは初めてだな。

結構いいもんだぜ。

こんど 阪口にも教えてやろう。

そしてこんなことを言うんだ。

彼がね、汗をひたすらかいてね、ヒトコトも感想を言わずに食べ終えるの。。。

私は美味しいと思ってるのよ。インデアンカレーの次に美味しいと。

何も感想がなかったら また 明日も作っちゃうじゃない。

って。

それも泣きながらだぜ。

でも最後 うれし泣きだったな、彼女。

明日も作るそうだ。 印度の味(辛口)

(以前の)カレーライス